第76章 君はまだ私のことを気にしている

黒谷優の足が、ぴたりと止まった。胸の奥を、電動ノコギリで引き裂かれるみたいな痛みが走る。

機械じかけみたいに、ゆっくり、少しずつ振り返る。佐藤詩乃を見る。ほとんど狂気に染まったその顔を。

さっきまでの彼女が全部演技だったとしても――いまのこれは、違う。

黒谷優は確信に近いものを覚えた。こいつは、本気だ。

振り返った黒谷優を見て、佐藤詩乃は涙を頬に貼りつけたまま、声を震わせる。生きる気配より、死を匂わせる震え。

「優……もう騒がない。怒らないで……ね? これからはいい子にする。私、あなたしかいないの。家族もいない……」

泣いているくせに、彼女の頭は妙に冷えていた。

兄ちゃんが黒谷...

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